埼玉県飯能市に工場を構える「株式会社椿本鋳工」。自動車の中で見えない部品として使われる鋳物を、手のひらサイズの小ささで、数多くつくり続けています。
大きな鋳物が主流になりやすい業界で、あえて小さなものに特化してきた理由は何か。品質の要となる「砂」の管理、そして日々の安全・品質活動まで。片岡さん、生駒さんに、現場の視点でお話を伺いました。
「椿本鋳工」を立ち上げられたきっかけを教えてください
片岡さん:
母体は大阪の会社なのですが、飯能のこの地とは、かなり長いご縁があります。ここに工場ができたのは、60年近く前のことだと思います。
自動車用のタイミングチェーンに関わる部品が必要になり、現在の場所に鋳物工場をつくったのが始まりです。創業としては昭和43年で、そこからずっと飯能でやってきました。
「椿本鋳工」の特徴やこだわりはどのような点ですか?
片岡さん:
椿本鋳工は小さい鋳物に特化しています。製作する鋳物の平均単重は約280gくらい。鋳物業界だと、1トン級、100kg級の世界もありますし、「小物」といっても5kgくらいが小物という会社も多いんです。
その中で、さらにその10分の1以下のサイズを、数多く作って供給していることが当社の特徴ですね。
こうした小物鋳物の取り組みを私たちは「ハイミニキャスティング」の名称で商標登録し、技術テーマとして「高性能・高品質・超小物鋳物」を掲げています。
小さな鋳物に特化することによる強みや、品質面で評価されているポイントはありますか?
片岡さん:
「こだわってきた」というより、結果的に「他社が手を出しづらい領域だった」という面はありますね。小さいものほど、一つひとつ仕上げや検査も必要になって手間がかかる。だからやりたがらない、というのは正直あります。そうした領域に特化してきたことが、結果として当社の強みになっていると感じます。
また、品質面においては、精度はもちろんのこと「鋳肌(いはだ)がきれいですね」と言っていただくことが多いです。表面の仕上がりの部分ですね。小さいものをつくるからこそ、そこは意識しています。

そして、品質を安定させるには、工程がしっかりしていなければいけません。鋳物は砂で型をつくるので、砂の管理が品質を左右します。
うちは砂を混練(こんれん)する工程で「二重混練」をしています。1回目で予備混錬をし、いったん貯蔵して“寝かせて”、その後に本混錬をする。そうすることで砂が安定して、型づくりの状態が整いやすくなるんです。
私たちの把握する範囲では、二重混練の採用例は設備導入やコスト面から多くありません。
「椿本鋳工」として日々現場やお客様と向き合う中で、大切にしていることを教えてください。
片岡さん:
安全・品質は製造のベースなので、しっかり活動しています。たとえば安全パトロールのように、工場内を定期的にチェックする取り組みがあり、全体で状況共有もしています。社内で情報を積極的に共有することも大切にしていますね。
「この仕事を続けてきてよかった」と感じる瞬間はどのような瞬間ですか?
生駒さん:
自分たちの部品は、自動車の一部品として見えるものではありません。でも、自動車という形で社会に貢献しているという実感はあります。
車っていろいろな会社の部品の集合体ですよね。つくり手としては、チームで車をつくっている感覚があります。設計者がどういう思いでうちに頼んだのかな、と想像することもありますし、道を走る自動車を見た時に、それが世の中に広く存在している。と実感できてやりがいを感じますね。
片岡さん:
車のモデルチェンジなどで形状や仕様が変わり、新しいモデルでうちの部品が採用されることがあります。その立ち上げが計画通りに進んで、お客様に安定して供給できて、品質面でも「安定してるよ」と評価いただける瞬間、こういった話をいただけた、立ち上がりから量産に移るまで、担当がそれぞれ伴走している感覚があり、喜びを感じます。
業務にあたって、どのような苦労がございますか?それをどのようにして乗り越えてきたかについてもお聞かせください!
片岡さん:
品質目標を、一般的なレベル感よりも、あえて少し高めに設定しています。もちろん到達できるのが理想ですが、なかなか届かないこともある。
だからこそ、日々の業務の中でトライアンドエラーをおこない、目標に少しずつ近づけていく。その積み重ねが大事だと思っています。
今後「椿本鋳工」として挑戦していきたいことを教えてください。
片岡さん:
自動車部品の製造には、これまで通りしっかり取り組んでいきます。そのうえで、建設機械や工作機械など、別分野の部品づくりにも挑戦していきたいですね。
それから、ものづくりを少し身近に感じてもらう取り組みとして、調理用の鋳物鉄板「美味鋳板(うまいぱん)」を飯能市のふるさと納税に登録しています。重さは約2.7kgで、実際に手に取ると「重い」と感じる方も多いと思いますが、そうした体験も含めて鋳物に触れてもらい、将来的にはより多くの方に届けられる形を目指していきたいです。
厚みのある鉄板は熱を蓄えやすく、表面はこんがりと、内部までしっかり火が通りやすいので、焼肉などもより美味しく楽しみやすいと思います。
最後に、飯能市の魅力、好きなところがあれば教えてください。
生駒さん:
海はないですが、気候が穏やかで、都会に近い割に自然が多くて住みやすいです。すぐ近くに山があって登山もできますし、川遊びにも行ける。
それでいて東京にも電車で一本で行けるアクセスの良さもある。仕事と生活を両立するには、いいエリアだと感じますね。川越のように歴史のある街も近くにあって、その距離感も魅力だと思います。
※「ハイミニキャスティング」および「美味鋳板」は株式会社椿本鋳工の登録商標です。
| 住所 | 埼玉県飯能市新光20 |
|---|---|
| 電話番号 | 042-973-8031 |
| アクセス |
・西武・池袋線「仏子駅」からタクシーで10分 |
| 公式HP | https://www.tsubakimoto.jp/tic/ |






