川越の街に根ざし、無添加・自然素材にこだわった「くるみの飴炊き」を届ける「木の実や」を運営する市野川さん。長年、食の現場に身を置いてきた市野川さんが、なぜ「くるみの飴炊き」を選び、挑戦を続けるのか。その思いと背景を伺いました。
「木の実や」を川越で立ち上げたきっかけを教えてください。
川越で生まれ育ったので、川越に拠点を置くことに迷いはありませんでした。
子どもの頃から見てきた蔵造りの街並みは、歴史を守るだけでなく、新しいものや面白いものを柔軟に受け入れる懐の深さがある。
川越にはお芋や煎餅といった定番のお菓子がありますが、くるみ菓子も昔ながらの「飴炊き」という手仕事で仕上げるものです。この伝統的な技法なら、川越の街に自然と溶け込んでいけると思いました。
以前は川越で事業を経営していたのですが、事業譲渡を経て、まだ何かできると思い、川越で新しいことに挑戦しようというのが出発点です。
「木の実や」の特徴やこだわりはどのような点ですか?
きっかけは単純で、初めて食べた時に度肝を抜かれたんです。「世の中にまだこんな美味しいものがあったのか」と。長年食に関わる仕事をしてきた中で、「くるみの飴炊き」に今まで経験したことのない美味しさを感じて。乾物として広く世の中に出せる品物として、これをやってみようと思いました。
くるみの素材にもこだわりながら、現在製造は川越市 霞ヶ関のコミュニティキッチン河越さんの厨房をお借りして行っています。

商品の一番のこだわりは、薄い飴でコーティングです。くるみのサクッとした食感と飴のカリッとした響きが重なり、噛んだ瞬間に香りが口の中に広がります。甘すぎず、お茶請けにもお酒のつまみにも合う後味の良さも追求しています。
ただ、この仕上がりを安定させるのがなかなか難しくて。油の温度が高くてもダメ、低くてもダメ。油とくるみの量。そのバランスを突き詰めることで、ようやく安定するようになりました。
お客様と向き合う中で、日々大切にしていることを教えてください。
「体は食べたものでできている」という思いを、何より大切にしています。
食品の現場にいると、加工食品に添加物や保存料が多く使われていることを実感します。事業者として考えれば、コスト的に当然の選択だとわかっていても、添加物が入っていないものを選ぼうとすると、選択肢があまりにも少ない。だったら自分がやるなら、無添加で自然素材だけで作ろうと。
「自分の子供にも、孫にも安心して与えられるものか」が軸になっています。
「やっていてよかった」と感じるのはどのような瞬間でしょうか?
はじまりはネット通販だけだったので、お客様と直接接する機会がなかったんです。
かわごえピクニックで初めてイベント出店した時、試食を400個ほど作って配ったんですが、配ってしばらくして「美味しかったから買いに来ました」と戻ってきてくれた方や「お土産で買ったつもりが、食べ始めたら止まらなくなって、もう一回買いに来ました」という方もいました。
お客様の声が直接聞けたことはもちろん、「自分の美味しい」が伝わったことが実感できたことは、本当に嬉しかったですね。
運営にあたって、どのような苦労がありますか?それをどのように乗り越えてきましたか?
「変わらない味」を守り続けることの難しさです。
飴炊きは非常に繊細で、気温や湿度によって飴の状態が微妙に変化します。常にベストな仕上がりを実現するため、火加減や乾燥の工程と日々向き合い続けています。
また、規模を大きくしようとすると人を雇うことになって、今の価格が維持できなくなる可能性がある。物価が上がっていく中でも、最初の思いである「安心して提供できるもの」だけは崩したくない。今の体制でできるところまでやりながら、どのようなやり方が考えられるのか、工夫を模索し続けています。
今後「木の実や」として挑戦していきたいことを教えてください。
まずは「川越のお土産といえば木の実やのくるみの飴炊き」と言っていただける存在を目指したいです。
そして、自然素材で安心して口にできるものをこれからも作り続けたいと思っています。人の体は食べたものでできている。その思いを軸に、将来的には、くるみだけでなく、地域の素材を活かした新しい食品への挑戦も考えています。
オンラインを通じて、川越の空気感と共にこの味を全国に届けていきたいですね。
最後に、川越の魅力、好きなところを教えてください。
一番の魅力は、古い歴史や伝統を大切にしながら、新しい感性を自然に受け入れてくれるところだと思います。私が子どもの頃から変わらない蔵造りの街並みの中に、現代的なカフェや飲食店が溶け込んでいる。この新旧が混ざり合う独特の空気感は、川越ならではの包容力だなと感じます。
くるみの飴炊きも、伝統的な製法で作るものなので、この街の歴史観にも馴染んでいけると思っています。いつか「川越のお土産といえばくるみの飴炊き」と言われるくらいになれたら嬉しいですね。
| 住所 | 埼玉県川越市霞ヶ関北 |
|---|---|
| お問い合わせ先 | kinomiya@akatsuki1166.com |
| 公式HP | https://akatsuki1166.com/kinomiya/index.html |






