旧川越織物市場および旧栄養食配給所の建物を活用して生まれた川越市文化創造インキュベーション施設「コエトコ」。市指定有形文化財という歴史的価値を守りながら、まちとクリエイターを結ぶ“現代の市場”として、日々さまざまな企画が芽吹いています。所長の町田大樹さん、チーフコーディネーター佐藤光さんに、お話を伺いました。
- 「コエトコ(川越市文化創造インキュベーション施設)」が立ち上げられた背景と、その目的を教えてください。
- 「コエトコ(川越市文化創造インキュベーション施設)」の特徴やお取り組みについて教えてください!
- 「コエトコ(川越市文化創造インキュベーション施設)」の施設運営について、大切にしている考え方はなんでしょうか?
- 「コエトコ(川越市文化創造インキュベーション施設)」の施設運営の中で、喜びを感じる瞬間を教えてください!
- 「コエトコ(川越市文化創造インキュベーション施設)」を運営されていて、現状苦労されていることはありますか?
- そのご苦労を乗り越えてきたエピソードを教えてください。
- 「コエトコ(川越市文化創造インキュベーション施設)」で新しく挑戦したいことを教えてください。
- 最後に、川越の魅力や好きなところがあれば教えてください!
「コエトコ(川越市文化創造インキュベーション施設)」が立ち上げられた背景と、その目的を教えてください。
町田さん)
この施設は、もともと明治から大正・昭和にかけての『川越織物市場』で、市指定有形文化財です。保存の方針を検討する中で、単なる公開施設として残すのではなく、活用しながら保存する道を選びました。
織物市場は、人やモノ、情報が行き交い関係が生まれる“取引の場”。それを受け継ぎ、現代における人の関わりを育む場所にする。そのような思いから、将来川越で活躍していく人たちの“スタートの場”として使えるインキュベーション施設をとして生まれ変わりました。

佐藤さん)
歴史と文化の香りが色濃く残る場です。そのため、昔からの歴史や文化を大切にしながら、多様なクリエイターたちの新しい視点でそれらの価値を再定義・再発見し、昔と今そして未来がつながっていく、そんな場所となればと思っています。
「コエトコ(川越市文化創造インキュベーション施設)」の特徴やお取り組みについて教えてください!
佐藤さん)
全国にインキュベーション施設はありますが、ここまで地域の生活圏に“溶け込んだ”立地は珍しいと思います。
ビルの一室ではなく、住宅地(まち)の中にあるからこそ、市民の皆さんとの交流や関係づくりを起点に、地域社会の活性化を図れるのが大きな特徴です。私たちは地域を豊かに保ち続ける、つながりを編み直す“地域豊饒化”という考え方で、面白い・好きで集まれる“種”となる企画を届けています。
入居クリエイターの方々には、それぞれの職能を活かしてコエトコに関わっていただいています。施設が打ち出す取り組みを通じて、多様な視点で物事を見るチカラを養っていただき、また地域とつながっていただく”場を介した支援”を重視しています。
川越で仕事をしたい人が、ここで人と出会い、自分のクリエイティブを試し、関わりを広げていける。そんな循環をつくっている最中です。

「コエトコ(川越市文化創造インキュベーション施設)」の施設運営について、大切にしている考え方はなんでしょうか?
佐藤さん)
面白さや楽しさを感じることができる種(アイデア)をつくるために必要な「+クリエイティブ」の視点です。そして、この視点でつくった種を入居クリエイターや地域の方々と一緒に育み、様々な点と点をつないでいく。これらの考え方を持ちながら、日々施設運営を行っています。

「コエトコ(川越市文化創造インキュベーション施設)」の施設運営の中で、喜びを感じる瞬間を教えてください!
佐藤さん)
『男・本気のパン教室』という、退職後のシニア男性向けのパン作りプログラムを開催しました。社会とのつながりが薄れがちなシニア男性の皆さまに、地域に出るきっかけをつくれないか。そんな思いからです。
受講生の一人は、コエトコの近くにお住まいの方。『パンは難しいけど楽しい』と通ってくださって、3月に開催したコエトコぴか市ではパン教室の受講生である、通称“パンじぃ”のみなさんがパンを振る舞いました。そこに地域の民生委員さんも来られていて、受講生と自然につながりが生まれました。
「パンを通して地域とつながることができた」「これを機に外に出ることが増えた」と話してくださって。まさに、この場所がまちなかにあるからこそ起きた出来事。ご近所の方に喜ばれ、暮らしの中に新しい関係が芽生える瞬間は、何より嬉しいですね。
「コエトコ(川越市文化創造インキュベーション施設)」を運営されていて、現状苦労されていることはありますか?
佐藤さん)
施設の認知です。イベントや企画をきっかけに足を運んでいただく場を提供し、施設価値をどう市民の皆さんに伝えるか、日々模索しています。

町田さん)
敷地の形状もあって、道路からは奥行きがあり、前を通ってもここに何があるのかが分かりづらい。蔵造り資料館や本丸御殿のように場所が明確な施設とは違う難しさがあります。
だからこそ、イベントや企画を重ね、この場所を“目的地”として訪れていただく機会を増やすことが大切だと考えています。
そのご苦労を乗り越えてきたエピソードを教えてください。
佐藤さん)
着任当初は、川越が初めての土地ということもあり、右も左も分からない状態でしたが、関わってくださった方々とのネットワークが土台になり、今年はプログラム数も参加者も増えてきました。『男・本気のパン教室』のように、生活圏に寄り添う企画から少しずつ関係が広がっています。
また、建物(旧川越織物市場)そのものに価値があるので、その魅力を伝える企画を定例化する案も検討しています。既にあるリソースを見つめ直し、来る理由を丁寧につくっていくことで、“分かりづらさ”を“来たくなる”に変えていきたいですね。

町田さん)
イベントを目的に来ていただき、『ここにこういう施設があるんだ』と知ってもらう。そこから口コミで広がっていくのが理想です。運営チームと力を合わせ、機会づくりを積み重ねています。
「コエトコ(川越市文化創造インキュベーション施設)」で新しく挑戦したいことを教えてください。
佐藤さん)
コエトコは、社会課題解決につながる種(アイデア)を、社会実装へ向けて“トライアルする場所”と考えています。その種を生み出すためのプログラムは今後も増やしていきますし、交流から生まれる企画をどんどん形にしていきたい。
具体的な内容は検討中のものも多いですが、ここに来れば何かしら面白いことが行われている。そんな状態を作っていきたいです。
最後に、川越の魅力や好きなところがあれば教えてください!
佐藤さん)
まちづくりの仕事でいろいろな地域を見てきましたが、川越は“まちへの誇り”を語る人が多い。居酒屋でも歴史や祭の話、町内の話が自然と出てくる。このようにまちへの熱い想いを聞いていると、私まで“川越って、いいな”と好きになっていくんです。最初は歴史あるまちゆえに“入りづらい”印象もありましたが、一歩飛び込めば懐が深いまち。迎え入れてくださる方々に恵まれ、今の仕事ができています。
町田さん)
私自身は市役所で建築を中心に携わり、歴史的建造物の改修や川越駅西口エリアの現場も見てきました。川越の面白さは、歴史的な建物と現代的な街並みが、ごく近い距離で共存していること。別々の流れになりがちな二つが、ここでは隣り合い、両面を楽しめる。ハード面に関わってきた者として、その重なりの中にコエトコがあることは、誇らしく感じています。
住所 | 埼玉県川越市松江町2丁目11番地10 |
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電話番号 | 049-298-3727 |
開館時間 | 9:00〜17:00 |
休館日 | 月曜日(祝日、振替休日の場合はその翌日)、年末年始 12/29〜1/3 |
入場料 | 無料 |
アクセス | 本川越駅より徒歩約12分、川越駅より徒歩約24分 バス「蓮馨寺」停留所より徒歩約4分 |
公式Instagram | https://www.instagram.com/koetoko1910/ |