一力齋津知屋提灯店は万治二年創業以来、代々柳田家が世襲していた提灯屋で、現在の「一力齋 津知屋提灯店」になったのは、九代目 柳田惣次郎に家業の継ぎ手がなく、明治四十五年から大正七年まで修行をしていた土屋房吉に十代目を継がせたのが始まりです。伝統を守り和紙を使用した手書き提灯や、とうろう絵(地口絵)などを製造販売しています。
土屋さんが12代目ということでこのお仕事を始めようと思ったきっかけを教えてください!
土屋:まあなんとなくですよね。笑
高2か高3の時に継ごうかなと思って、本当は美術系の大学に行きたかったんですけど、親の勧めもあり、普通の大学に行きました。
大学3年の時から取引先の提灯屋に修行に行って、大学卒業後そのまま家の仕事に就いたっていう形ですね。
修行期間はだいたい2年くらいで、大学3年の時に単位を取り終えて大学4年生はほぼ毎日修行の日々でした。
家業を継ぐにあたり、家にない技術を持ち帰りたくて修行に行ったので親父に教えてもらおうとは思いませんでした。
実際、親父とは扱っている道具も全然違いますしね。
一力齋津知屋さんの特徴やこだわりを教えてください!
土屋:この仕事をやり始めた当時は親父の字に近づけようと思ってやっていましたけど、やはり同じようにはなかなかできないですよね。
会社を引き継いでからは自分の良さを出してこうと考えを変えて、日々自分が今できる精一杯の仕事をやっています。
1.2年前の自分の字を見ると下手だなと感じるので、少しづつですが成長してるのかなと思います。
うちの強みは可能な限り昔の材料にこだわっているところで、ほとんどの業者さんは黒い絵の具で文字書きしてますが弊社では全部墨を使って書いてます。
朝墨を摺る所から仕事が始まります。絵の具だと固くなっちゃって字が割れやすいんですよね。
以前うちに来たお客さんが、別の所で安いからと提灯を頼んだら一年で駄目になってしまったと言ってまして、ありえない事だなと思いました。
弊社ですと品質的にはレベルが違うので値段だけではなく品質の部分を見て欲しいなっていうのはありますね。
逆に長持ちすぎると注文が入らなくて困るでしょという意見もありますが自分が納得できる提灯を提供したいので満足しています。
このお仕事を始める上で大変だったこと、逆に嬉しかった瞬間を教えてください!
土屋:別に大変なことはないですね。
自分で選んだ仕事なので、疲れたなと思うことはたまにはありますけど、大変とか辛いと感じることはありません。
やはり提灯を書いてお客さんに喜んでもらってというのが一番嬉しいですよね。
今後伸ばして行きたいことや、今現在困っていることを教えてください!
土屋:例年注文が入る提灯の半分くらいはお祭り関係の仕事です。
川越祭りに限らず全国のお祭りで使う提灯を書かせてもらってるので、それがゼロになりましたからここ2年はかなり大変でしたね。
皆さん祭をやりたがっていますし来年は各地で開催されればいいなと思います。
うちとしても祭りが開催されないと仕事が少ないのでコロナの流行は収束してもらいたいです。
また、今は海外製の安価な商品が格安で流通してきていて、提灯も低価格競争になってきています。
うちとしては無駄な低価格路線での勝負はせずに、高品質の和紙を使うとか良質の墨で書くとか、手間を惜しまず、うちにしかできない昔ながらの部分を活かしていくような路線でやっていきたいと思います。
決して値段もたかくありませんからね。
津知屋さんは今後川越にとってどのような存在でありたいですか?
土屋:川越のイメージって色々あると思いますけど、今はどちらかというと観光にシフトしているのでそういう部分は実はあまり好きじゃないんですよ笑
うちは大手町に店を構えてるので、そこでの繋がりを大切に思っています。
外向けにというよりは、地元の人のために何かをしたいという感じなので、引き続き祭りなどを裏方として支えていこうとは思います。
最後に川越の魅力と好きなところを教えてください!
土屋: 歴史がある街なのでいい場所、魅力のある場所はたくさんありますね。
特に時の鐘は自宅からも見えますし、街のシンボルでもあるので大好きです。
定時に鳴る鐘の音は心が落ち着きます。
あとは川越で会社を経営してる昔からの仲間もたくさんいます。
横の繋がりが強いのも川越の魅力ですね。
やはりずっといたい街だと思いますし、この街を出ようとは思わないです。
住所 | 〒350-0057 埼玉県川越市大手町2−4 |
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電話番号 | 049-222-1053 |
営業時間 | 営業時間9:00~18:00 定休日日曜日・祝日 |
アクセス | 川越駅から車で8分 |
公式HP | https://ichirikisai.jimdofree.com/ |